店舗施工でまず重要な見積もりとその見方
見積書のチェックポイント
まず見積書を見るときは、金額の確認を最初に行うのが普通です。ただ、費用総額が自分の伝えた予算内に収まっているかどうかを確認するだけでは、もちろん不十分です。細かな施工項目に漏れがないか、依頼した内容と違っていないか、理解できない項目や記述がないかなどをしっかり確認するようにしましょう。
【見積内容(内訳や詳細など)のチェック】
店舗施工について詳しい知識がなければ、材料や作業内容、費用の妥当性を判断することは難しいです。とはいえ、見積書にはできるだけ詳しく内訳が記載されていることが必要です。
例えば、項目に「キッチン設置工事一式」という記載のみで、その金額が記されていたとします。この場合、どのメーカーのどのキッチン製品が使われるのかがわかりません。また製品の価格と設置工事の作業費用の内訳もわかりません。つまり「一式」の内容を一切把握できないため、適正かどうかを検討することも困難になります。
【有効期限に注意】
見積書には、一般的に1~3カ月ほどの「有効期限」が表記されています。これは材料費や人件費などの変動が想定されているためで、期限切れの見積書を元に発注する場合は同じ金額で発注できるとは限りません。従って、見積書の期限内に正式に発注するか否かを決める必要があります。もしも期限を過ぎてしまった場合は、現見積書通りの内容・金額で発注できるかを確認しましょう。
また、細かい話ですが、金額の記載方法が「税別」「税込」のどちらになっているかも確認しましょう。大抵は、項目ごとの費用が税別で表記され、各項目の合計金額が下部に「小計」として記載されます。これに消費税額を加算したものが「総額」などとして表わされます。しかし、見積書の書式は発行者ごとに自由なので、必ずしもこの形とは限りません。後に金額認識に相違が出ないように、念のため消費税の記載は見ておきましょう。
施工項目とその概要を知っておく
見積書を見る際、どんな工事や作業が必要なのかがわからなければ、記載内容の是非を見極めることは難しいでしょう。技術的な部分まで細かく理解する必要はありませんが、大体の施工項目とその概要は知っておくべきです。一般的な店舗内装工事で必要になる工事・作業について、いくつか見ていきましょう。
【電気工事】
電気工事では、コンセントやスイッチの位置変更、配線工事を伴っての照明や空調機器、スピーカーの設置、必要に応じて分電盤内のブレーカー増設などが行われます。配線工事では、どのように配線を取り回すかで費用に幅が出ますし、天井の点検口の有無などで作業費が変わる場合もあります。現地でしっかり確認して見積もりを依頼する必要があります。そもそも必要な電力量が足りているかも確認しておきましょう。
【ガスや給排水などの工事】
キッチンの移設や、特殊な調理器具の設置が必要になる場合、ガスや給排水などの配管工事を行う必要があります。配管工事では、既存の配管が床下などのどこに設置されているのかがポイントになります。特に排水管に関しては、キッチンを高くするなどして傾斜をつけた上で建物のメインとなる排水管へ接続しなければならない場合があり、希望する場所に設置するためにはかなりの費用がかかることがあります。
【空調工事】
業務用のエアコンがもともと天井に埋め込まれている場合には、そのまま利用できることもありますが、古くて性能に不安があるようなときは、本体や室外機の交換を視野に入れなければなりません。エアコンに関しては「付随設備」という見方はありますが、物件の賃貸借契約次第で個々に異なります。まずは貸主に交換や修理の場合の負担はどちらにあるのかを確認する必要があります。
契約書の内容をよく確認し、記載がない場合には明確に取り決めた上で施工に盛り込むかなどを判断するといいでしょう。また、「ダクト工事」が必要になるとその分費用は追加されるので、空調用のダクトのほか、特に飲食店の場合は厨房からの排気についてきちんと考えましょう。
【建材・設備機器】
床・天井・壁をきれいにするには、床材やクロスといった製品が必要になります。カウンターや扉などを店舗の雰囲気に合わせたもので設えるなら、その建材が必要です。飲食店ならば、業務用の調理機器や洗浄機器、保冷機器などが必要になります。これらについて、自分の希望があるならどのようなものなのかを明示する必要があります。これが曖昧だと施工側は困ってしまいますし、見積もり時にも独自の判断で製品を選ばざるを得ません。結果的に発注までのやり取りが長くなり、着工後のトラブルにもつながりかねません。施工側の提案を受け入れるにしても、必ず製品については細かく確認・把握するようにしましょう。
【追加工事】
事前に現場を確認していても、配管や配線の劣化など表面上での判断が難しい部分で、作業困難な事態に直面することがあります。その場合、変更・追加工事で対応することになりますが、通常は別途見積りとなります。内容によっては高額になりますので、事前に想定できる範囲だけでも追加工事の可能性と概算費用などについて相談しておき、不測の事態に対する心積もりがある程度できている状態が理想です。
とは言え、追加工事は発生しないには越したことはないので、できる限り見積り依頼の段階で、精緻な内容を提示するように努めましょう。
比較検討には相見積もりが必要
一社からの見積書だけでは、その内容や金額が適正なものであるかを判断することは困難です。そのため、複数の施工会社に見積もりを依頼し、比較検討することで最適な一社に絞り込んでいきます。必要に応じて不明点を確認した上で、再度見積書を出してもらうこともあります。
同じ発注内容で複数の会社に見積もりを依頼することを「相見積もり(あいみつもり)」と言いますが、相見積もりの際にこそ、金額だけでなく内容についてもしっかり確認・比較する必要があります。例えば、会社Aが配線作業費を10万円で設定しているのに対し、会社Bが5万円で済むというのなら、詳細な内容について質問・相談してみることをおすすめします。会社Bが経費削減などの企業努力で安くできているのか、あるいは両者の施工内容認識の違いによるものという可能性もあります。
このように、相見積もりは、発注内容と費用を適正に判断し、最良の依頼先を決めるためには不可欠です。そのためには、必ず同じ条件・内容で見積もりを出してもらうことが重要です。
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